ラルーナ文庫版「仁義なき嫁・情愛編」をお読みいただいた皆様、ありがとうございます。
恒例になってきました、あとがきモドキ。
どうぞ、お楽しみください。
さて、今回は大幅改稿。加筆、加筆、加筆です(笑)。
電子版は夫婦に特化させた視点と考え、舎弟とのシーンを足しました。
前回の新婚編から、嫁の第一部は後半戦に入りまして、
結婚から始まり、うぶな初恋へ進み、。
面倒な恋愛の深みへと…。
電子書籍を書く段階では、もっとドタバタしているはずだったんですが、意外に二人の背負っているものが大きすぎて、かなり振り回されました。
だって、お互いに良くない状況だとわかっていて、深みにはまって行くんですもん…。
周平も、周りからは「棚ボタ」だの「願ったりかなったり」だのと言われているわりに、本心では乗り気でないですね。
結局、身体だけを繋いできた悪い過去をなぞっているだけで、まるで健全じゃない。
健全な愛情を育めるはずの佐和紀との関係が、少しづつ狂っていくのがこの巻です。なので、書けども書けどもHシーンに深みが出ず(笑)。そりゃそうですよね。本来なら、一巻辺りでやってるようなことですもの…。
正直なところ、題材とBLジャンルの兼ね合いのぎりぎりところにいるなー。と思いました。
おそらく、佐和紀が「女」であるか、「女のようなキャラ」ならもっと簡単だったかと思うんです。恋愛脳を持ってるとか。
そして、BLではなく、ハーレクインだったなら(笑)。
それは冗談ですが、小説の手法的にBLでなく、JUNEだろうと思ったり、いろいろ悩みながら電子書籍版を書き、文庫版の修正もしました。
本来なら、もっとBLのセオリーのようなものに寄せておくべきところをそうしなかったのは、この作品の初出が電子書籍だったことも大きいです。
何の制約もなく作品を発表することは、プロになるほど難しくなります。
そして、シリーズ展開をしていくことも。
どこかでも書いたのですが、この設定で、このテーマを書くことは今後、難しいだろうと思いました。
いっそ、このあたりは電子出版もうやめてお蔵入りに…と思ったりもしたんですが、書くなら出すしかないということで…(笑)。
結果として、題材をうまく料理しきったとは言えないと思います。
どうすべきだったのか、今でもこのあたりは答えがなくて…。嫁を続けるか、一部で終わらせるかで迷いもあったからだと思います。
そして、望まれるものと作風の兼ね合いは、なかなか難しく、これからも試行錯誤です。頑張ります。
それでも全力は出せたんですよ。
ありがたいことに文庫で加筆もできて、本当によかったです。
(全力を出せたと言うのは、本来の自分の書き方で二人を思うままに書けたって意味です)
そんな中、後半を書く上で一番難しかったのは、佐和紀を「女」にしないことでした。軟禁されて、愛されて、流されるままに『受』らしく内面まで「女」になってくれれば、書いている方も楽だったんですが…。
そんな佐和紀ではなく(笑)。
周平を受け止めつつ、結局はマウントポジションを取らずにいられないという佐和紀の性格(笑)。そして、周平を守れるのは自分だけだという、絶対的な思い込み。(あの思い込み力すごい…。)
それでも、佐和紀の性格のすごい根本的な部分は「母性」だと思います。
何もかもを男に任せて流されるような「女」ではいられないけど、人と環境を守る「母性」ですね。
これは私の人間観によるところが大きいのですが、「男」「女」に分別されたとしても「外に出る男・内にいる男」「外に出る女・内にいる女」がいると思います。
それぞれも性愛の対象が男であろうが女であろうが、「外に出る性別」と「内にいる性別」の組み合わせが成立すれば家庭は構成されうると思います。
もちろん、性別の部分には第三の性も含みます。
上記の考えは、「雨情夜話」という話を書いていたときに考えていたことなのですが…。あの頃はまだ主夫という言葉もなかったような気がします。
話を戻しますが、じゃあ、佐和紀と周平は…というと…。
ね。両方「外に出る性別(男・男)」なんです。
自分の持論に、自分でつっかかる(笑)。
まぁ、大滝組は大所帯コミュニティなので、問題ないです。
内を守る家政婦や、部屋住みがいますから。
岡崎と京子のところも「外に出る性別(男・女)」同士ですね。
これは要するに、共稼ぎ夫婦という意味合いなので、情愛編と初恋編の本当のテーマと言うのは「古い慣習の中で、妻の社会進出は叶うのか」っていう…(笑)。
めっちゃ、壮大な(笑)。
このテーマに対する答えは、シリーズ全体の課題ですね…。
最終的に「これですよ!」という答えは書きませんし、あくまでも、周平と佐和紀の場合は…だし。(BLには関係ないし…)
松浦の「バカは家にいろ」岡崎の「傷つくから外へ出るな」はある年代の女性が言われ続けていたことでもあるように思います。
今回はあえて「女は家を守れ」は入れませんでしたが。
さすがにそこまですると、ほんとにBLじゃなくなる…。
でも、松浦・岡崎から、疑似的に「女」と見られている佐和紀本人は、まったくの男なので、そんなことは気にも止めず…。言われても気にならない。
ある意味、現代的な考えの象徴でもあるかなと思ったり。
いいですよね。佐和紀の爽快さはそこかもしれない。
そう考えると、このシリーズは先駆者でありながら抑圧されている京子の存在が(自分で設定しておいて)絶妙ですね。
今後も活躍してくれると思いますが、周平が散々言っているように、佐和紀に自己投影すると、京子姉さんも後々がきつそう…。
周平と京子の関係もねー、不思議です。
ちなみに、京子が周平に「さん」をつけたのは、補佐になってからですよ。
今回、加筆した際に大活躍したのは、三井でした!
周平とのやりとりが岡村・石垣とは違う雰囲気で、あれは完全に、書いてみたらこうなりました、です。
周平にとって、本当の意味での舎弟は三井なのかもしれない。
兄弟っぽくてかわいい。
次巻の初恋編では、三井だけではなく岡村石垣を含めての兄弟シーンも加えましたのでお楽しみにー!です。
あとがきモドキなので、あとがきにもツイッターにも書きにくい思いの丈を書きました。
たくさんの感想をいただく上で、誰かの想像にはかなったけれど、誰かの想像にはかなわないと言うことがたびたびあります。
こうなって欲しかった、こうなって欲しい。
読者の数だけ理想があって要望があって、そのすべてをこなすことができなくて、本当に申し訳ないなーと思うのですが、ただ真摯に書いていきたいと思います。
というのも、これから仁義なき嫁シリーズは佐和紀の過去を暴露していく上で、佳境に入っていくので、いやがおうにも事件が起こります。
新婚・情愛・初恋編のような作品は書けないだろうと思います。
そして、読者のみなさんの期待を良い方に裏切ることも、その逆もあるように思います。
でも、作った作品(二部のラストまではもう大枠が決まっているので)を、きちんと最後まで書いていきます。
なんて書くと、誰か死ぬのか、バッドエンドかと思われがちですが、絶対にハッピーエンドですから!
死んで幸せになりましたは、絶対にないです。
そんなの幸せじゃないし……。
そして、仁義なき嫁シリーズはファンタジーやくざであることを明記しておきます(笑)。
これから、周平側の裏社会も出てくるとは思いますが、ファンタジーです。
そもそも、時代設定自体、現在ではなく「今より前」ですしね。
ネオ横浜とは言わないまでも。
さて、全体的に反省と展望みたいになってしまいましたが、今回のあとがきもどきはこのあたりで。
どうにも、続嫁のプロットを立ててる関係上、非常にナーバスです…。
感想をくださるみなさま、ありがとうございます。
要望には応えられないこともありますが、読者のみなさんの妄想を聞くのは大好きです。
懲りずに感想をよろしくお願いします。
感想をいただかないと、作家は本当に孤独な妄想家に過ぎないので…。
それでは。
次回は、2016年2月19日発売の「仁義なき嫁・初恋編」でお会いしましょう。
初の連続刊行!
追伸:皆さんにお買い支えいただき、第二部の文庫化もあり得そうです…!
そして、その前に、ユウキ編の文庫化がありそうな気配。
うまく形になりますように。私、またユウキの髪をくりくりにしてもらってしまいそう…。そして、イメージ違うって怒られる…。ユウキは、仁義嫁界のジルベールだと最近気づきました。たぶん、気づくのが遅かったですね。
どうぞ、応援のほど、よろしくお願いします。