仁義なき嫁・群青編【あとがきモドキ】

あとがき

『仁義なき群青編』をお読みいただきまして、ありがとうございます。
 本当にありがとうございます。そして、お疲れ様でした。

 大丈夫でしたでしょうか。読みながら「あ、あー!!」ってなりませんでしたか。
 私は推敲するたびに叫び、引きずり、校正しても引きずり…。
 書き手として、これほど悩ましく、そして大変な一本はありませんでした。

 読者のみなさんが、「これはこれでしかたない」と思ってくださるとありがたいのですが、もちろん「この展開はイヤだった」と言う方もおられるはずだと覚悟しています。
 おそらく「もう読まない。ここまででいいわー」と言う方も出るでしょう。

 それで、かまいません。
「ごめんなさいねー」とは思うのですが、同時に「ここまでつきあってくださってありがとうございます。では、ここで…」と思います。
 考えてみれば、第一部の終了時も同じような気持ちでした。

 わからない人にはわからない。
 わかる人にはわかる。
 いつかありえたこと、これからありえるかもしれないことを下敷きにして書いています。

 いまさらBLで生々しい夫婦ゲンカを見たくないとのレビューがあったり、常に三歩下がった内助の功を佐和紀に求められたこともあって……。。
 そのたびに、ちょっと心が揺れたり、痛んだりしてきました。
 
 そして、結局は同じことを考えます。
「そのお願いは他の方が、もっと上手に叶えてくださいますよ」と。
 同じ価値観の人とだけ一緒にいたいわけではないけれど、この作品で書きたいことは、作者の私が決めていくしかないと思うに至りました。

 今回の展開は、私の中ではずいぶん前から決めていた規定の展開で、このあとの展開も骨格はできています。
 それでも、群青編を書き上げたあとは迷いました。
 展開は予測できていたけど、登場人物たちの動きやこころの変化は書いてみて初めてわかることも多いので。

 書いているときは、プロットに沿って、佐和紀の心を追って、必死でした。
 でも、書き上げてみると、なんだかイヤで、「いまのままでいいじゃない」「変わらなくても、スパダリとイチャイチャして、ときどきやんちゃしていればいいじゃない」と思いました。
 そのたびに周平が現れては「決定だ。これが既定だ」と言います。

 同人誌の番外編を書くと、平穏な二人が眩しくて、群青編を書き直して別の展開にしようか、とも考えました。

 じゃあ、どんな展開にしようか。
 そう思うと、先は見えません。
 
「あ、そうか。ここで終わりか」
 と気づきました。
 この展開以外を選べば、仁義なき嫁は、佐和紀の物語はここで終わりです。遠雷編の続きを書く必要もありません。

 群青編を出して続きを書くのか。

 もうなにも書かずに(過去の謎ときだけして)終わるのか。

 そのどちらかしかなかったので、私は周平に従って、このままの群青編で行くことにしました。
(こういうことを考えているとき、たいした作品でも、大人気作でもないのになぁと正直思いますが、読んでくださっている方、付き合ってくださる方のことを考えると、印刷数だけがすべてではないと思います。常に、小説というものを問う姿勢に真摯でいたいのです)

 おそらく、群青編を発行して、いくらか感想をいただけた頃には、私の気持ちも落ちついて、第三部のことを考えられるようになっていると思います。
 どうぞ、感想をお聞かせください。

 ツイッターで、推敲するたびに動揺していた理由は以上です…。
 下記は裏話的なものをいつも通りに。

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 今回は特に、構成が難しくて…!
 
 まず、事件はまったく別のところで起こっていて、佐和紀は巻き込まれない。
 だけど、気持ちだけが変化していく。
 あれこれ難解ですね。私にも難解でした。佐和紀はなにを知ってていてなにを知らないのか…。矛盾がありそう…(爆)。

 作品の構成としては【6】で第二部完にして、「えー、どうなるの!」という引っ張りをするのでしょうが、さすがにそんなことはできず。
 【7】【8】をつけて再会までを書きました。

 知世について。
 彼は当初から「佐和紀の代わりに酷い目に遭う人」という設定だったんですが、兄の設定を入れたときから、少しずつ違う作用が…。

 新キャラを入れるときは事件への関わり方だけが決めてあって、各登場人物への作用は話の進行と共にできていきます。
 知世はいろいろ想定外のところも多かったです。
 元々、読者からの好き嫌いが分かれているキャラですが、今回のことでどうなるのか…。(分かれて欲しい、嫌う人も出て欲しいと思って書いています)

 石垣がいなくならなければ、知世が入ってこなかったのかな?と考えたとき、「これはもう、確実に周平はわかってて石垣を出したな」と思いました。
 もちろん、知世みたいな子が来ることは予想していません。
 ただ、佐和紀のそばから「予測能力の高い人間を排除した」可能性は否定できない。

 そんな周平さんは、いったい何を考えてるのか。
 簡単にはわからないと思うのですが、いろいろ想像してもらえたらと思います。

 でも、誰かの思考を100%理解することって必要でしょうか?
 あいまいも、それでいいような気がします。きっと、あとあとわかります。

 それに、登場人物それぞれの立場、スタンスは本編・番外編で書いてきました。
 ので、各キャラの行動は、これまでにフラグを立ててきた原理原則に従っています。
 本編の中の事件だけの影響を受けているわけではないので、それぞれがプライベートで抱えている問題が微妙な変化をもたらしてることもあります。カノジョと別れたとか、誰かに嫌味を言われたとか、見えない小さな事件です。これらは文章中に事件として書かれることはありませんが、セリフなどに影響を与えています。

 周平の内心は、考えれば考えるほど私もせつなくて、彼サイドの心情を書くシーンが少なくて良かった…。本当に、年上で、ものを知っていて、そして見送る立場にあるってつらいですね。がんばったと思います。

 由紀子のこと。
 あんまりにもあっさりと脇役落ちしちゃったなーという思いはあるのですが、もう、全然、まったく、だれも相手にしてくれなくて(笑)。
 佐和紀も、周平も、京子も、すでにその先を見てます。ただ、由紀子だけが彼らの視界に入ろうともがいてる感じ…。
 最終的にどうなるのかは、第三部でわかる予定ですし、もう一度、スポットが当たるかも知れない…。でも、華々しく返り咲くことはないですね。

 とにかく、直登がぐいぐい来るので…(予定外)。

 三井のこと。
 彼の過去はいままであまり出てきませんでしたが、こんな感じでした。
 キャラのイメージが変わるのがイヤで、番外編にもして来なかったんですが、実際に書くとなると暗くなるので……こんな感じでいいのでは。

 ただ、文庫用に佐和紀と三井のバディモノを描き下ろしましたので、そちらでも過去がちょっと見えます。

 岡村のこと。
 コメントする必要があるでしょうか。
 ありますか、そうですか。
 まるっきり無視される展開が、胸アツでした。作者でさえ「え、事前通達ナシ!?」みたいな驚き。
 落ち込むよー。それは、落ち込むよー。
 
 でも今回、いろいろラッキースケベ的な感じがあった気がするので、仕方ないですね。

 岡村は、実際、もっときちんと動けた、と思う方は、ちょっと彼を贔屓目に見過ぎているかも知れません…。

 デートクラブの管理に加え、自分に惚れているはずの知世が、自分が本来やるべき「佐和紀の聞き役」の座を奪ったことに気づいていません。
 そういう油断が、遠雷編辺りから顕著ですね。
 勝手に、愛人クラスになれてると思ってる…。
 ばか、シンさんのばか!
 もっと、がんばって…!
 

 今後のこと。

 ちゃんと、書きます。
 来年の八月には群青編の裏話的に番外編を出して、第三部始動は、秋か冬になります。
 できれば、年二回を年三回にしたいなと野望だけはたくさん。
 その分、番外編が減りますが、第三部は番外編どころじゃないだろ、みたいな(笑)。

 タイトルも変わらず「仁義なき嫁」です。
 電子は「続々・仁義なき嫁」になってるんじゃないかな。

 そして、私からみなさんにお約束できることは以前と変わらず。

 ・死に別れはない
 ・佐和紀は成長する
 ・一穴一棒主義

 この三つは死守したいです。最後はもう、ある程度不自然でも守りたい(笑)。
 でも、岡村が相手ならいいと思ってる方はいらっしゃいますよね。そこはなんとも言えません。佐和紀が周平だと思い込んでたら、それは周平なんじゃないのかとか…、逃げ道ってね、ありますよね…。

 そういうところも含みで、見守っていただけたらと思います。
 そうなるには、シンさんがやや頼りないですが。

 今回の『群青編』が全体の折り返し地点になるかなという予測です。
 
 感想をくださっているみなさん、本当にありがとうございます。
 どんな内容であっても、直接いただく声は、胸に留めておくように心がけています。
 こんな展開はイヤだという思いも率直に書いていただいて問題ありません。

 それでも、物語は変わりません。
 彼らは彼らの生き方をします。

 受け止めた私が寂しくなる感想もときどきありますが、わざわざ書いてくださるみなさんは、もっと真摯に物語を受け止めて、こらえきれなくて書いているのだと思います。
 そういう方が大半だと感じます。

 でも、私は、気に食わなかった方のために物語を曲げることができないし(その人はもう読まないかも知れないし)、待って下さっている方に対して、自分なりの小説を届けていきたいと思います。
 

 第二部を完了して、ますます、きちんと書き切らなければと思うようになりました。
 『誰かが望んでいる物語』ではなくて、『読者が待っている仁嫁が出す答え』を書き切りたい。あんまり長い時間かけずに…(笑)。

 私は変わらず一生懸命頑張りますので、読者のみなさんもいままで通り楽しんでくださると嬉しいです。
 岩下夫婦はしばらく別居婚ですが、物語はシリアス一直線にならない予定ですので。
 この状態で楽しめることを探して行きます…。

 周平のそばに真幸で、美園のそばに佐和紀って、どういうことやねん。っていま、私は思ってます。
 美園なら、佐和紀と一緒に温泉入れるんじゃない……。手も、出せるんじゃない……(いや、ダメでしょ)。

 最後に……。
『花牡丹のサーシャ』とか噴飯もののふたつ名つけてごめんなさい!!
 紅葉さん、大満足です!! 昭和!!

 どんどん、おかしなテンションになって来たので、このあたりで失礼します。
 
 感想を書いていない方は、是非、書くと良いと思います(プレッシャーをかける)。
 お待ちしています。

 2018年12月 高月紅葉 (訂正:2019年5月)