「春売り花嫁とやさしい涙」を読んでくださった皆様、ありがとうございます。
あとがき代わりに裏話なんかをつらつらと書いてみたいと思います。
お暇があれば、お付き合いください。
まず、いつも、頭を抱えているタイトル。
今回も二転三転して、なんとか落ち着きました。
春売りって、そのままですね。売春花嫁ですから(笑)。
でも、うっかり「花売り」って読んでしまいます。読者の方の中にもいらっしゃるのではないでしょうか。
そもそも、結婚させるつもりだったのかと言うと、そうでもなく……。
そもそも、ユウキ編を書くつもりだったのかと言うと、そうでもなく(笑)。
ユウキをかわいそうがってくださった一部の読者さんの後押しがあり、それなら考えてみようかと思ったのがきっかけでした。
そして、難航する相手選び。
世話係の中からは選べないし、新キャラ…だとしたら、どんな人がいいかな? 真面目なサラリーマンとか、がつがつした年下とか…。うーん、うーんと悩んでいるとき、ぴょんと現れて、「はいはーい!」と猛烈にアピールしてきたのが能見でした。
正直、「え? あんたなの?」と作者である私も思ったのですが、「佐和紀に粉かけてたじゃん」とも思ったのですが、本人はけろっとして「奥さんは眺めるだけでいいから。手なんか出したら、バックにいる人も本人もこわい」って感じで。
「じゃあ、考えてみようか」としばらくほったらかしていたら、そのうちにストーリーが湧いてきて、ようやく書き上げることができました。
でも、好きだから手を出さないって言うのは、どうにも私のテンプレですね。
好きになった途端、相手を宝物みたいに扱う男が好きなのかしら…。そうなのかしら(笑)。
能見が朝ごはんを用意しているところや、買い物シーンでコートを買ってあげるところは、プロット段階では生まれていないエピソードです。
書いているうちに、能見がそうした、って感じですね。
たぶん、女の子相手ではそんな人ではないと思うんです。ものは買ってあげるけど、自分の趣味を押したりはしない。朝ごはんも用意しない。
ユウキだとあぁなるのは、基本的に「年下の男」だと思っているからかも。
面倒を見てやらないといけない後輩っていう感じが、下地にある気がします。
一方のユウキは、本編では嫌われ役として、その部分だけを書いたので、今回、ちゃんと彼自身を描く機会があってよかったです。
本編では、憎き佐和紀にまとわりつかれ(笑)、勝手に友人指定され、大変迷惑していたわけですが、ユウキも友達がいないから、なんとなく付き合ってしまうという感じ。
佐和紀にとっては、唯一と言っていいほどの「友人」。
なんというか、女友達みたいな(笑)。
能見のことも友人だと思っているんだけど、能見は「ツレ」ですよね。
今回、佐和紀にとっては、友人同士をお見合いさせてくっつけると言う気持ちがあったわけですが、「あいつ、良いヤツだから」という軽い感じで、わりといい加減だったりします。
能見から、「一回やったら好きになった。もう一度会いたいからなんとかして!」(まぁ、こんな感じで)と言われ、三井あたりには「うぇー。やめとけよ。バカか」と言われながら、旦那に「なぁなぁ」と相談に行くわけです。
感覚としては、「俺のダチがさー、ユウキのこと好きなんだって。良いヤツだし、付きあわせてみたらどう?」程度のものですね。
周平は(仕事でヤッた相手に惚れられても、まったく嬉しくないと思うけど…。まぁ、佐和紀からの頼み事は珍しいし、まぁ、いいか)という適当さです。
同時に、(能見も二、三回やれば納得するだろ。佐和紀のトレーニング代だと思って、プレイ代はまけておいてやろう)ですよ。
ユウキの感情はまるで無視ですね…。無視ですよ。
これで能見が佐和紀に迫るかもと言う心配もしなくていいし、どうせ身請けさせるからそれまでのことって感じですよね。
そんな周平は、安定の悪い男で、書いていてすっきりしました。
「これが周平だわー。悪いわー。嫌だわー」と。
しかも樺山あたりの実力者からは、認められつつ嫌われる(笑)。
大滝組長にも嫌われてますしね、周平は。
そんな周平ですが、その本心は佐和紀だけがなんとなく察しているんです。
ユウキへの感情とか。
周平自身は口にも出しませんけど、やっぱり仕事仲間と言う感覚では大事にしているし、今まで利用し尽くした分、ちゃんとしたところへ身請けさせたいとも思っている。
ユウキは、周平に惚れてもいるけど、ちゃんとした仕事人なんですよね。
傷ついた後、周平がちょっとフォローしてあげていただけで、自分のやるべきことが何かわかっていて、だからこそ、汚いことも我慢して来た子。
だから、周平が特別に扱ってもいたわけです。
なので、佐和紀も口には出さないけど「ユウキのこと、舎弟たちと同じように好きなんでしょ」と思ってる。
そして、佐和紀自身も世話係たちに対するのと同じように、ユウキを大切に思ってるわけです。
今回は、ユウキ編なので、佐和紀たちの感情は書きませんでしたが、裏側ではそんな岩下夫婦の感情のやり取りがあったりします。
ユウキの結婚式の夜は、佐和紀に「さびしいんだろ? 花嫁の父みたいな気分?」とからかわれたりしたのではないかと。
そしてたっぷり、慰められたと思います。
あの結婚式で使用した教会にはモデルがあって、軽井沢の「石の教会」です。
でもちょっと違う部分もあるので、あくまでモデルですね。
実際の教会が同性婚に使えるのか、って問題があるので…(笑)。
自分では、いい結婚式が書けたなと思います。
サインで手が震えてしまうユウキを支える能見の、頼りがいのあるところと、その後、叫んでしまうバカさ加減…。
あと、ちょっとだけ出した、石垣と三井の(男の)筆おろしはユウキと言う件。
じゃあ、岡村は誰が相手だったんでしょうね…みたいな(笑)。あれは三井が知らないだけで、ユウキだと思いますけど(未定)。
ちなみに、ユウキが結婚するまでの世話係との関係は…
三井→ たまに抜いてもらうセフレ感覚。下手だからと、挿入は断られる感じ。
石垣・岡村、周平にも知られている。
石垣→ ごくまれに誘ってヤってた。でも、周りには内緒。
岡村→ 自分からは興味なし。周平から嫌がらせで押し付けられること数回。
ヤらなかったら、後で追及されるので、とりあえずヤる。
まぁ、ユウキの好みはインテリってことだと思うんですけど、そこにするりと入り込んだ能見…。がんばった(笑)。
岡村は、この手の(男とやるように言われる)嫌がらせをちょくちょく受けてます。
女の相手は仕事ですが。
明らかに周平からの「佐和紀に色目を使うなら、他の男とやっとけ」というメッセージですね。そうやって、岡村を試すのが楽しくてたまらない周平の意地の悪さ。
書き上げたあとで、悔やんだことが一点ありまして。
なぜ、デートクラブの支配人に名前を付けなかったのか(笑)。
良いキャラだったのにな。そのうちに、名前がつくかもしれません。
今回のこの話は、時系列としては「続・仁義なき嫁2」の後になります。
今作での記述は避けましたが、佐和紀は腰の傷が治りかけぐらい。
周平がよく許したなと思いますが、かなり脅されたのかも。
知らない間に行かれるよりはいいからと、応援も出しての公認です。
勝手に行かれると、一人で乗り込むことになるので。
ユウキは周平を心の拠り所にしていたわけですが、能見と幸せなった今も戦友としての気持ちは残ってます。
どん底に落ちずに済んだ恩義も感じているので、佐和紀と一緒に拉致られるようなことがあれば、まず間違いなく佐和紀の貞操を守り、率先して身を投げ出すだろうと思います。それは能見が傷つくとわかっていても。
そこには、周平に対する気持ちと、認めないけど佐和紀への友情があるような気がします。能見は、おそらく、結婚しても、ユウキの心の中から周平が消えるわけじゃないことを知っているし、能天気なのでそんなことは深刻に考えません。
さすがに佐和紀の代わりにヤられて帰ってきたら悲しくなるけど、怒ったり突っぱねたりはしないでしょうね。
そこは、ユウキの男としてのプライドを認めると言うか。
でも、佐和紀がキレまくるだろうな~。
ユウキがヤられながら作った隙をついて、敵陣を全滅させてくるかも。
佐和紀無双(笑)。「ケガすんなぁ」と泣きつくのがユウキだったりして…。
お色気たっぷりの姐さんバディですね、この二人(笑)。
片や、非力だけど淫乱な、ふわふわ系美青年。
片や、狂犬でありながら純情な、清楚系美人。
二人で歩くと、王子様と若殿様が歩いてるような感じかな…。
なんだかんだと言いながら、ユウキも佐和紀が好きなんですよね。
ユウキの結婚を機に、二人の関係はさらに良くなっていくと思います。
(佐和紀の手駒が増えたとも言う…)
さて、つらつらと書きました「あとがきもどき」。
随分と長くなってしまいましたが、ここまでのお付き合いありがとうございます。
本当に楽しい執筆だったので、書き上げた時から、裏話を話したくて話したくて。
ここで一気にぶちまけられて、スッとしました!
今作は、一応シリーズものとして電子書籍スタンドの登録をお願いしています。
特に今後の予定はないのですが、その後を描いた日常編のようなのをやれたらいいなと思ったり。
前述の、トラブルバディはいま思いついただけなので…ないと思います(笑)。
感想・レビューをくださった皆様、ありがとうございます。
創作は孤独な作業でもあるので、発表後の反応は本当に嬉しいです。
あと、ツイッターでお付き合いくださっている方にも感謝を。
お返事できないこともありますが、レスポンスがあると、待っている人がいる実感が湧いて、がんばるぞーって思えます。本当にありがとうございます。
現在は、続仁義なき嫁3の執筆中です。
秋ごろにはお届けできるように誠意制作中。
ここだけの話ですが…。
お待ちいただいている紙書籍版も、その頃には良いお知らせが出来るかと。
ただ、御存じの方もいらっしゃる通り、アズノベルズが休刊となりまして、いろいろと『大人の事情』を含んだお知らせになりそうです。
とりあえず、救済の手はありました…と今はそれだけをお伝えしておきます。
4巻(短編集は飛ばしますので、新婚編)は、大幅加筆しました。
新たなエピソードを加えてのお届けになりますので、電子書籍で読んでいる方にも、新鮮な気持ちで読んでいただけると思います。
それでは、今回はこの辺りで。
次の仁義なき嫁は、夏コミの同人誌新刊です。
周平の悲願(?)であるお道具セックスと、プラスアルファ、マットプレイでお届けします。マットプレイ…。なぜ、そんなことになったのか…。周平とラブホの取り合わせはヤバいです。
あと、タモッちゃんの一人称短編もセットで!
どうぞ、よろしくお願いします。
<おまけ>
執筆中のおともは乃木坂の『君の名は希望』でした。
勝手にテーマソング。