仁義なき嫁・雪華編【あとがきモドキ】

『仁義なき嫁・雪華編』をお読みいただき、ありがとうございました。
雑文所感・あとがきモドキです。

メモを参考に箇条書きで!

◎後半は佐和紀におまかせ

淫雨編・愁景編と書いてきて、正直、この大阪編がどこへ舵を切っていくのか、まったくわかりませんでした。
もちろん、シリーズを通しての方向性は決まっています。
でも、佐和紀の心の落としどころはどこなのか、ずっと考えていました。

ちなみに悩んでいたから、淫雨編と愁景編のうつうつが長いわけではありません。長編シリーズの中で、これぐらいの停滞期は許されたい…と思ったのですが。
どうでしょう。文庫になったときには厳しいかも知れません。

同人誌と電子書籍では続きを出して行きますので、文庫にGOサインが出なくなったときは、仕方がないと思っています。
せめて、この雪華編までは出してもらえればと思いながら書きました。
(出版社からなにか言われているわけではありません)

つまり、仁義なき嫁は売り上げとか関係なく、登場人物に寄り添って書いています。
言い換えるなら、書けています。とてもありがたいです。
みなさん、本当にありがとうございます。

淫雨編・愁景編の二冊を買い支え、とりあえず見守ってくれたこと、すごく嬉しいです。

折に触れて感想を下さったり、仁嫁についてTwitterでつぶやいてくださっているみなさんのおかげです。
これからも、みんなそれぞれに仁嫁世界を共有出来たら嬉しいです。

というわけで、私が悩むほどのこともなく、佐和紀はしっかりと道を決めてしまいました。
考えてみれば、周平のそばをどうしても離れたいと思い込んだのも佐和紀、捨てられた荷物に関して怒ったのも佐和紀。
作者の私ではないように思えます。

どちらも、私自身は「どうなの…?」と思ったものでした。

佐和紀はまるで理論的に考えていませんが、過去を思い出したことによる、「忘れていた自分」との整合性が取れてきたように見えます。
私も、ついていくのに大変…。ほんと…。

◎常寂光寺もいいけど、祇園祭の歌繋がりで祇王寺

プロットでは「周平と会う・デート」と書かれていたシーン。
東山界隈は「花氷編」で訪れており、そこへもう一度…?
と思いましたが、閃きで嵐山へ。周平さんチョイスです。

「常寂光寺もおすすめです」と読者さんからコメントをいただきましたが、今回は祇園寺推しです。

常寂光寺は以前に観た映画で使われており、そのイメージが強いのと、別作品で使用したことが理由。

佐和紀が第一部の三巻『旅情編』で口にした、母親との思い出曲『祇園祭』。BY谷村新司さんです。

あれから、ふたりが折に触れて、この曲と親しんできたことは、作中にもちょこちょこと触れています。
周平がアリスや谷村新司を知っているのは、兄貴分である岡﨑が好きだからと言う裏設定があります。
彼のためにいくつかの曲をカラオケで披露するようになり、勝負曲は「秋止符」という流れです。

岡崎兄ぃは『祇園祭』を好きなタイプではないですね。
谷村新司マニアにしか通じませんが、彼はアリス寄りのソロ初期が好きなんじゃない…(笑)。

今回、嵐山の辺りを書いていて、『旅情編』から『花氷編』そして今回の『雪華編』と、この一曲が深ーいところに存在していて、けっこう仁嫁裏テーマかもしれないな、と思いました。

結婚の良し悪し。
するとか、しないとか、自分を生きるとか。過去の傷とか。

◎旅立ちはフリージア

あのシーン、なにも考えずに書きました。
プロットでは『秘密基地マンション・ふたりの時間』そんな感じです。

なので、フリージアを一本だけとか、まったく考えてませんでした。パジャマも!!

そして、私も佐和紀と一緒に涙しました(笑)。
どっちかというと、そこで涙する佐和紀に、涙。
ここまで大変だったもんね~…と。

ちなみに、翌朝の『後朝の別れ』シーンも、ふわ~と下りてきた感じで。見送る周平、戻る佐和紀。いや~可愛かったな!

松田聖子さんの『旅立ちのフリージア』については、同人誌を発行した後に、ふと思いつきました。そーいえば、ぴったり。

◎ここへつながる初恋編

前述のフリージア。
佐和紀が初恋編で夜這いをかけるときにブーケにして持参した花です。

そのときもやっぱり、私は「バラかな?」ぐらいのふんわりで書いた記憶があります。でも佐和紀が店先でバラをチェンジしてフリージアに。

あの夜、周平はすっかり征服されてしまったんですよね。
『かっこよくて素敵な旦那様』じゃない部分も俺は知っているし、見せたっていいんだからな!という佐和紀の無言の駆け引き。
でも、そうであって欲しいという思い込みもあって、ちぐはぐなのも良きかな、と思います。新婚さんっぽくてね。

そして、初恋編でのやりとりがあってこそ、周平はいまの暮らしを受け止めたり、荷物を捨てたりできてしまう(しなくても、よかったんだけど)。

語り合わなくても、自分の弱さもつらさも佐和紀は理解していると、周平は知っているので。
そして、そこに触れずに出かける佐和紀の底意地や気持ちを理解し、応えずにいられないのが周平で…。
そこもまた佐和紀は無自覚にわかっている感じ。

『愛するとは愛し続けること。信じるとは信じ続けること。』
これも谷村新司さんの『バサラ』という曲ですが、岩下夫妻のイメージ。

◎周平のこと

私でさえ、どうして荷物を捨てたのでしょう…あなたは…と思うことがあります。

でも、『いまのままを保ち続けるのではなく、明日のために新しい服を用意しているところ』が周平の矜恃であり、「らしさ」だと思います。

どんなものも、いつかは古ぼけてしまうことを、周平は良く知っています。
だからこそ、いつまでも新鮮な恋愛関係でいようと努力する。

周平にとっては、佐和紀だけがすべてで、思い出の品々でさえ、どうでもいいんでしょう。

あのマンションは、佐和紀と出会う前から周平の隠れ家であり、周平の内面を現わすような場所。
そこがあんなふうに変わっていたことや、そこにあったものはそのまま残して、さらに、買い足しているのが…。
周平の本音なんでしょうね…。

◎盃ネタ

これはまったく、考えてもみなくて!
真柴サイドの暴走だったので、紅葉さんもびっくりでした!!

そして、大滝組長に会いに行くエピソードもプロットにありませんでした。護さん、久しぶり…と思いました。

本当に、後半は佐和紀任せだった…。

真柴は、佐和紀と出会わなければカタギになっていたかもしれないと思います。
カタギになったからって、幸せになれたかどうかはグレーだし、スミレとは出会わなかったわけで、感謝しているからこそ、京都は俺が受け持つ!みたいな気分がありそう。

カタギになっていたら、由紀子&道元に食い潰されたと思うので、真柴は強運の持ち主…。
佐和紀という存在に導かれた結果、道元の上に立っているので。
真柴は、道元の上に立ってもしっくりくる。
この逆は想像できないな~。
でも、いろんな場面で道元のほうが実力者。

真柴はとにかく性格がいい。私は大好きです。

あと、対周平に対して、圧倒的に佐和紀寄りなのも良き。
岡村は周平とやり取りして情報コントロールをしますが、その一方で、絶対的防波堤になり得るのが真柴と道元。
このあたりは、右腕・横澤の手腕と言うところでしょうか。

◎佐和紀の別れの潔さ

今回のラスト。牧島さんとのこと。
これも、プロット外のエピソードで…。

「あー。そうか。そこは切るのか…」と。
別にケジメをつけなくても、牧島さんはうまく立ち回るのですが、佐和紀にとっては気にかける相手が増えるので重いわけです。
責任が取れないし、取ってくれと言われるはずがないことも知っている。そんな借りは、周平としか作りたくないのかも知れません。

牧島さんとお友達に戻れる日を心待ちにしたいと思います…。

◎軽井沢

昨今の軽井沢は暖かいらしく、それほど雪は降らないようですが…。
いつもたっぷり降らせてしまう。

今回、美園を連れていけなくて…。真幸と会わせてあげたい(笑)。

そして、周平と直登のやりとりはあえて入れませんでした。
自分の弟分に対するよりも優しく丁重かつ真摯に向き合ってる周平。
佐和紀の本当の弟のように扱ってるなぁと感じるときも。
(やや、お父さん…みたいなところも)

そう言えば、直登の決断も意外でした。
(通りで、どう書いても思い通りの結果にならないわけで…)
スミレの母性に触れて、真柴の父性に守られて、その後どうするのかは、また物語とともに決断が為されていくと思います。
私としては、佐和紀の新三羽がらすのひとりとして配置したのですが。
うまく行きそうにないなぁ(笑)。

三井・石垣・岡村の三羽がらすトリオを愛好されている方にとっては、彼らとずっとワチャワチャしていて欲しかったでしょうが、彼らは周平のものなので…。
もう二度と佐和紀のそばに配置されないわけではないと思うけど、私にもちょっとわからない…。
三井が、周平の元を離れてくれる思えない(笑)。

すべて周平に与えられているという構図は、私の意図するところではないので…。

きっちり自分の足で立って頭で考えて、必要あらば旦那という飛び道具でトドメを差す。けど、それは旦那のためではない。
それが、新しい時代の極妻かな~と思ったりします。

佐和紀はいつか横浜に帰ります。そう遠くない未来に。
それからまた、周囲を固め直していくと思います(もしくはその都度、固まっていくか)

私の最近の悩みは、周平の去就。
佐和紀の組長就任式、あの人は、内と外、どっちにいるのでしょう。
…おたのしみに。

高月紅葉

【追記】たびたび出てくる「プロット外」「プロットになかった」というのは、初期プロットから途中で変更があった。もしくはざっくりしたプロットで決めたやり取りとは違う形になった。と、いうことだと思います。20220601